T君(26歳、男性、看護師)は、2011年1月にプノンペン市内でバイクを運転中交通事故に遭い、頭部を損傷する大怪我を負いました。幸いなことに、すぐに救急車が駆けつけ、病院へ搬送。脳外科の手術を受けました。
しかし、手術後しばらくは意識不明の状態が続き、これ以上の回復は難しいのではないか、と言われました。家族は、藁にもすがる思いで、全財産を投げ出してT君をベトナムの病院へ搬送し、更なる手術を受けさせることを考え始めました。カンボジアでは、ベトナムの病院のほうが設備も技術も充実しているというふうに考える人が多く、カンボジアでだめなら、ベトナムへ、と考えることが多くあります。
T君の場合、手術自体は成功しており、問題はそこからのケア、本人の回復力などの問題であり、ベトナムへ行って手術を受けることは最善策とは思えませんでした。実は、T君は、グラフィス診療所で研修を受けていた看護師の一人でした。家族に状況を説明し、家族はベトナム行きを中止しました。一家の長男として、T君は家族から愛され、頼りにされ、回復を切望されていました。しかしT君の家族は貧しく、ベトナムへ行くためには家族のほとんどの財産を売り払うことになります。それで回復する可能性があるならいざ知らず、必要ではない(有効ではない)手術のために家族が更なる貧困に陥っては意味がありません。グラフィス診療所では、すでにこれ以上打つ手なしと思われているT君に、投薬とリハビリを行えば、回復する可能性はあると判断し、家族にグラフィス診療所での治療を提案しました。
2011年2月23日、T君はプノンペンからグラフィス診療所へ転院搬送されました。(つづく)
















